クメン寺院制作・ベース編


本体がある程度出来上がったところで(実際は塗装が始まる直前に)ベースの制作に移ります。 今作では、どちらかというとベースの方がメインのようなつもりで臨んでいますので、制作記もやや長めとなっておりますが、最後まで見ていただけると嬉しいです。

まずは、石造りの神殿部分の材料となるスタイロフォームを切り出します。 3センチ厚と2センチ厚の物を買ってきて、幅3センチで切り出しています。 画像は2センチ厚の物を切っているところです。 机の上では作業スペースが取れませんので、床にダンボールを引いて切り出しています。 

続いて神殿壁面のレリーフを作ります。 素材はスーパースカルピー(加熱することで固まる粘土)を使っています。 

欲しい大きさに0.5mm厚の発泡スチロール板を切り抜き、そこにスカルピーを敷き詰めるような感じで作っていきます。 右側の画像は焼きあがったものですが、薄い板状であったがため、少々反り返ってしまいました。 後々、この反り返りが何度も問題になりました…。


切り出したスタイロフォームを、それらしく積み上げてきます。 この段階では接着するのではなく、竹串を通すことで固定してあります。

何しろ私は、こういった計算(設計)を必要とする作業がどうも苦手でして、様子を見ながらあれこれ変更が加わってしまうんです。 この段階で接着してしまうと組み換えができなくなってしまうので、竹串での仮留めが都合がいいわけです。 最終的には接着するのですが、その段階でも心材として竹串を刺しておきました。 実際の建築用材で言いますと、鉄筋みたいな物でしょうか。

右側の画像は、焼きあがったレリーフを貼り付けたところです。  こちらも仮留めですので、両面テープで固定してあります。


出来上がったレリーフ部分を複製します。 複製は、極一般的なシリコン型を使う方法を選択しました。

ブロックで枠を作り、粘土を敷き詰め、複製をとりたいパーツを軽く埋めてやります。 ブロック枠の内側にシリコンゴムを流すことで、片面の型が出来上がります。 

シリコンはGSIクレオスのものを使っております。 このシリコンは硬化剤との混ぜ合わせに融通が利く(あまり厳密に計らなくても硬化してくれる)のでお気に入りです(笑) 感覚的には、硬化剤を倍入れると倍の速さで固まるというか。 …あまり硬化が早いと気泡が抜けませんので、そこら辺は経験を元に調整してやります。 指定されてる分量で使用すれば、何の問題も無いですし、特に急ぐ制作でもなかったので、今回はマニュアルどおりでやっております。

各硬化剤と主剤の混ぜ合わせには、左画像のようなポリビーカーを使います。 気をつけなければいけないのは、ポリビーカーの内側についているメモリをあてにし手はいけないということです。 ついつい水と同じ感覚で、1リットル=1キログラムと考えてしまったりするのですが、比重は全然違います。 画像は500グラム使用するところです。 メモリは400にしかなっていませんね。 コレを500まで入れちゃだめってことです。 きちんと計り(重さ)の数字を見ながら行いましょう。 

右側は、以前に作ったシリコン型を細かく切ったものです。 コレを混ぜ合わせることで、量が稼げます。 シリコンゴムは消して安い素材ではないので(1kgで3000円くらい)、こういった資産を活かすことも重要です。 当然今回作りました方も、複製をとった後で切断し、次回のシリコン型制作時に増補材として使用することになります。


ブロック型にシリコンゴムを流しました。 増補材が若干顔を出しているのが見えると思います。 あまり増補剤を多く使ってしまうとディティールに影響が出てしまったりするので注意が必要です。 できるだけ複製を取りたいパーツに接触しないような位置にまいてやるのが望ましいです。

片面硬化後、粘土をはずし、その部分にもう一度シリコンを流し込みます。 これで両面の型が出来上がります。 タイヤキの型を想像してもらうとわかりやすいでしょうか。 そこにレジンキャスト(2液混合で硬化する注型素材)を流して複製パーツを作るわけです。 

右画像の白っぽい部分が、複製品を使っているところです。 


レジン注型繰り返し、必要なパーツ数を揃えます。 今回は10回程度流しました。 

面倒な手順も必要でありますし、素材も決して安くはありませんが、同じパーツを複数作る手間に比べると、やはり断然こちらの方が楽かと思います。


続いて地面部分を制作します。 まずは木製ベースの縁に木部用ニスを塗ります。 今回は「ローズウッド」を使用しました。  もちろん、模型ようの塗料よりはるかに厚みがあったりするのですが、非常に簡単につやが出てくれて楽です。 …模型用も、筆の一発塗りでこういう塗面(光沢)が出るような塗料があると面白いんですけどね(笑) 

あんまり楽だと楽しみが薄れるので、今くらいでちょうどいいのかもしれませんね。

ニス乾燥後、縁部分にマスキングをして、土部分を盛り付けてやります。  土部分の素材にはシーナリープラスターを選択しました。 

シーナリープラスターは簡単に言ってしまうと軽量の石膏で、 粉末に水を混ぜることで硬化します。 単価も安いですし、こういった情景模型の制作によく使われます。 今回は、水を混ぜる際にアクリル絵の具を混ぜることで、下塗り作業を1段階省略しております。

シーナリープラスター乾燥後に、カッター・紙やすりで大まかに地形を作り、神殿を配置します。 
シーナリープラスターの特性上、神殿床の部分は埋め込んであります。 その上に、神殿部分を乗せてやります。 

塗装は暗めのグレーを基本にして、3段階程度のドライブラシ(レリーフのエッジ部分に明るい色をこすり付けて、凹凸を強調する技法)をかけてあります。 ドライブラシには、寒・暖両方の色を使うように心がけました。 両方あったほうが、自然素材を使用している感じが出せるかと思っております。 

塗装の後、カラースポンジやパウダーをまいて、コケを再現します。 今回は各3色程度を使っておりますが、もう1色くらい多くてもよかったかと思います。 固定には、水で薄めた木工用ボンドを使用しています。  情景模型制作には、木工用ボンドは欠かすことができません。 

植物の再現には、紙製品(和巧の「紙作り」)や百均で購入したフェイク水草(水槽に入れるやつ)、ドライフラワー、調味料関係(乾燥したパセリの粉末等)などを使っております。 1個1個はたいした精度ではなくても、まとまるとなんとなくそれっぽく見えてくるから不思議です。

また、地面はジャングルの赤土を再現すべく、かなり彩度の高い赤系の茶色(レンガ色をベースに調色)を配してあります。 
塗装時に、ドライフラワーの小枝などを混ぜることによって、かき混ぜられた泥、植物を再現してやります。 


スナッピングタートル本体にも汚しを加えていきます。 

足の底面近辺に、土を着色した塗料を塗って、泥の付着を再現しています。 各エッジ部分はガンメタルでドライブラシをかけ、塗装の禿をを再現しました。 また、筆による書き込み(チッピングと呼ばれる技法)を行い、錆の表現としています。 ここら辺の作業は、エナメル塗料を使って拭き取りも交えながら進めていきます。 

以上のような工程を経て、「クメン寺院」完成です。 

オリジナル作品には遠く及ばないものの、自分としてはかなりのスキルアップにつながった、とても思い出深い制作になりました。

ギャラリーに完成状態の写真を何枚か用意しましたので、そちらも見ていただけると幸いです。


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